問題の本質を見抜く思考法—ケーススタディ学習で鍛える実践的解決力

雲・雨・傘を表現した画像

仕事でのプロジェクト締め切りの前倒し、予算削減、取引先からの急な仕様変更…。ビジネスの現場では、日々予期せぬ問題が飛び込んできます。

こうした状況に直面したとき、問題の本質を見抜き、最適な解決策を導き出せるかどうかは、あなたの「問題解決力」にかかっています。

しかし、多くの人が「研修で学んだことを実践に活かせない」「フレームワークを覚えても使いこなせない」と悩んでいます。なぜでしょうか?

それは、正しい思考プロセスを訓練していないからかもしれません。

そこで本記事では、海外のビジネススクールで広く採用されている「ケーススタディ学習」をご紹介します。

ケーススタディ学習の目的は、「特定の問題を解決すること」ではなく、問題解決のための思考プロセスを体系的に訓練することです。正解を覚えるのではなく、どんな問題にも適用できる「考え方」を身につけるのが狙いなのです。

この思考トレーニング法を用いて、日常的に取り組める問題解決力の鍛え方を、実践的なワークを交えながら解説していきます。

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

ケーススタディ学習:思考プロセスのトレーニング

ケーススタディ学習の「ケース」とは、事例のこと。しかし、その目的は単に事例の答えを知ることではありません。

株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン代表取締役の茅切伸明氏はこう説明します。

さまざまなビジネスの場面、職場の中で起きそうな問題を具体的な事例として研究し、実務に役立つ原理原則を修得させ、実践力を高めようとする技法である。受講者は事例を当事者の立場で解決していく過程を通して、類似の問題や状況における問題解決に必要な分析力、判断力、洞察力、意思決定力等を養成することができる。 *1

つまり、「この問題はこう解決する」という個別解を覚えるのではなく、「どんな問題でも体系的に考えられる思考法」を身につけるのが本質なのです。

この思考プロセスを習得できれば、未知の問題に直面しても慌てず、筋道立てて解決策を導き出せるようになります。

指の先に「SOLUTION」を書かれている画像

問題解決の思考プロセス:3つのステップ

問題解決の思考プロセスは、「現状分析→問題発見→解決策立案」という3つのステップで構成されます。ケーススタディ学習では、この思考の流れを繰り返し訓練します。

MBAゼミナールを運営する株式会社Milkyways代表取締役の太田卓氏は、この思考のステップを「雲・雨・傘」というフレームワークで説明しています。*2

思考プロセスの3ステップ

・ステップ1: 現状分析(雲)= 誰もが確認できる「事実」を整理する

・ステップ2: 問題発見(雨)= 事実に基づいて「原因と問題点」を特定する

・ステップ3: 解決策立案(傘)= 問題に対応する「具体的行動」を考える

重要なのは、この順序を飛ばさないこと。多くの人は現状分析や問題発見を省略して、すぐに解決策を考えようとします。しかし、それでは表面的な対処療法になりがちです。

この思考プロセスを身につけるため、実際に練習問題に取り組みながら訓練してみましょう。

ワーク1:現状分析

次の情報を「外部環境」と「内部環境」に分類してみましょう。

  • 営業時間は10時から19時
  • 座席数は30席
  • 毎週月曜と祝日は定休日
  • 近隣に大手コーヒーチェーン店あり
  • 客単価は平均600円
  • 1月は祝日が多い

▼下の表に記入してみましょう▼

外部環境
内部環境
 
 

※このページを印刷するか、自分のノートに同じような表を描いて記入してみましょう

解答例:

【外部環境】

  • 近隣の大手コーヒーチェーン店の存在
  • 1月の祝日の多さ(営業日数への影響)

【内部環境】

  • 営業時間(10時〜19時)
  • 座席数(30席)
  • 定休日の設定(月曜・祝日)
  • 客単価(平均600円)

本を手に持つビジネスパーソン

ワーク2:現象と原因を区別する

次の記述について、「現象」か「原因」かを判断し、なぜそう考えたかも書き出してみましょう。

  1. カフェの売上が減少している
  2. 大手チェーン店の方が客単価が安い
  3. 週末の待ち時間が長く、客が離れている
  4. SNSでの宣伝が不足している

▼考えを整理するためのフォーマット▼

項目1は【    】だと思う。なぜなら...

項目2は【    】だと思う。なぜなら...

※すべての項目について、自分の判断とその理由を言葉にしてみましょう

解答例:

  1. 「カフェの売上が減少している」は現象です。これは観察可能な結果であり、何かの原因によって引き起こされた状態だからです。
  2. 「大手チェーン店の方が客単価が安い」は原因です。これは顧客がチェーン店を選ぶ理由となり得る要素で、売上減少という現象を引き起こす一因となりうるからです。
  3. 「週末の待ち時間が長く、客が離れている」は現象です。これは観察できる状況を説明しており、その背後には席数の不足や回転率の低さなどの原因が隠れています。
  4. 「SNSでの宣伝が不足している」は原因です。これは売上減少を引き起こす可能性のある要因であり、対策を講じることが可能な部分だからです。

※現象と原因の区別が難しい場合は、「これは観察できる結果か?それとも何かを引き起こす要因か?」と考えると判断しやすくなります。

コルクボードに貼られた「Why?」と書かれた紙

ワーク3:「なぜ?」を5回繰り返す

カフェの問題について、あなた自身で「なぜ?」を繰り返し、原因を深堀りしてみましょう。

▼次の現象からスタートして、あなたなりの「なぜ?」の連鎖を作ってください▼

【現象】カフェの客数が減っている

なぜ?→

なぜ?→

なぜ?→

なぜ?→

なぜ?→

▼最後に、あなたが見つけた本質的な問題点を一文で表現してください▼

本質的な問題点:

※必ず自分で考えてから、解答例を読んでください

解答例:

【現象】カフェの客数が減っている

なぜ?→大手チェーン店に客が流れている

なぜ?→チェーン店のほうがいつでも空席がある

なぜ?→我々のカフェは常に満席に近い状態である

なぜ?→客1人あたりの滞在時間が長い

なぜ?→時間制限や利用ルールを設けていない

本質的な問題点:座席回転率の低さが機会損失を生んでいる

「CASE STUDY」という文字を虫眼鏡で見る画像

ワーク4:「雲・雨・傘」フレームワークを使ってみよう

カフェの問題についてこれまで考えてきたことを、「雲・雨・傘」のフレームワークで整理してみましょう。

▼以下のテンプレートに記入してください▼

(事実/現状):

(解釈/問題):

(行動/解決策):

▼チェックポイント▼

  • 「雲」は客観的な事実のみを書いていますか?
  • 「雨」は「雲」から論理的に導かれる解釈ですか?
  • 「傘」は「雨」の問題に直接対応する解決策ですか?

※自分の回答をチェックポイントで評価した後で、解答例を見てください

解答例:

:座席数は30席で、客1人あたりの滞在時間が長い

:座席回転率が低く、新規客の機会損失が発生している

:混雑時間帯は90分の利用時間制限を設け、回転率を高める

笑顔でこちらを見るビジネスパーソン

ワーク5:あなた自身の課題に取り組む

いよいよ学んだことを自分の課題に適用してみましょう。次のいずれかの問題、または自分で設定した課題について取り組んでください:

  • 残業時間の削減(目標:月20時間→10時間以下)
  • リモートワークでの生産性向上
  • 年間100万円の貯蓄計画の実現

▼ワークシート▼

取り組む課題:
________________________________________________

Step 1: 現状分析(外部環境・内部環境を整理)

外部環境 内部環境
   

Step 2: 問題発見(「なぜ?」を5回)

 

Step 3: 解決策立案(「雲・雨・傘」で考える)

雲:_________________________________________________

雨:_________________________________________________

傘:_________________________________________________

▼行動計画▼

この課題を解決するために、明日から取り組むこと:

 

※このページをプリントアウトするか、ノートに書き写してじっくり取り組んでみましょう。実際に行動に移すことが何より大切です!

***
ケーススタディ学習は「正解を覚える」学習法ではなく、「考え方を鍛える」トレーニング法です。問題の答えより、問題に向き合うプロセスこそが重要なのです。日常の様々な場面で意識的に思考プロセスを実践することで、どんな問題にも対応できる本物の問題解決力が育まれるでしょう。

※引用の太字は編集部が施した

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